北京五輪のボート女子軽量級ダブルスカルで日本女子過去最高の9位の成績を収めた諏訪市出身の岩本亜希子選手(29)=アイリスオーヤマ、岡谷南高−早大−日体大大学院出。3大会連続の出場となった五輪で初めて準決勝に進み、前回の13位から順位を上げた。競技人生のすべてをぶつけた大舞台で世界の強豪とこれまでにない激戦を繰り広げ、日本女子の躍進を示した。諏訪湖でボートに出会って15年目の夏、集大成として臨んだ五輪の戦いを終え、帰国した岩本選手にレースを振り返っての感想や現在の心境を聞いた。(宮坂麻里)
日本女子で過去最高9位 納得の一けた順位
入賞へあと1秒
−五輪を終えた現在の心境は
とてもすっきりとした気持ち。過去2大会に比べ、世界と勝負ができた大会だった。シドニーとアテネでは強豪国についていくのが精いっぱい。最後は10秒以上の大差をつけられるなど相手にもならなかった。それが、今回はスタートから自分たちのペースでレースを組み立てることができ、最後まで互角に渡り合えた。目標にしていた決勝まであと4秒、(8位)入賞にはあと1秒届かなかったことを思うと残念な気持ちもあるが、自分の力を出し切り、納得のいくレースはできた。何よりも勝負が楽しかった。この4年間やってきたことが出せて本当に良かったと思う。
−日本女子では初めて準決勝に進出した
各国の顔ぶれは過去にメダルを取ったり、決勝に何度も進んでいる強豪国ばかり。格上のクルーとずっと横に並んで競り合い、息遣いやオールの動きを感じ続けながら2位争いもしたレースは、本当に苦しかったけれど面白かった。北京に向けた練習で、ラストスパートをどう仕掛けて勝負するかを重視してスピードを上げるこぎを追求してきたが、準決勝はその終盤の勝負どころで2人のこぎに少し力みが出た。(組6着で)目標の決勝に届かなかったが、日本から来てくれた方々が「大接戦に感動した」「すごくいいレースだった」と喜んでくれたのはうれしかった。
報われた猛練習
−17−12位決定戦では3着で日本女子最高の9位となった
これまでで最高のレース。ゴール後は全く動けないほど力を出し切った。過去の実績から考えれば日本は11、12位でもおかしくなかったと思う。最後まで自分たちのこぎに集中して接戦に持ち込み、一けた順位を出せた。世界中の国が特別な思い入れを持って臨む五輪という舞台で、これまでどうしてもかなわなかったイギリスや、準決勝では敗れたアメリカに競り勝てたことは大きかった。この4年間、これ以上ない苦しい練習に耐えてきたことがすべて報われた気がした。後悔は一切ない。
−シドニー五輪14位、アテネ五輪13位からの飛躍を目指し、日本女子ボート界を引っ張ってきた
アテネ五輪以降の4年間は、自分が成長すれば日本女子のレベルアップにつながるという思いで、過酷な練習に耐えてきた。(日本ボート協会が招いた)イタリア人コーチとの出会いで、練習は毎回、自分の限界を打ち破ることの繰り返しだった。練習量に対しても、内容についても、それまでのレベルを超えていた。絶対に無理だと思った連取メニューをこなしてこれたのは、やはり世界で負け続けた悔しさがずっと心にあったからだと思う。
来季以降は白紙
−集大成として臨んだ北京五輪を終えて
世界を目指すようになった原点は中学2年の時、バルセロナ五輪で岩崎恭子さんが水泳で金メダルを取った時の思い。自分と同じ年の女の子が日本中に衝撃を与えたあの夏、自分も何か大きな事をしたいと思った。その気持ちを持ち続け、ここまできた過程は私の財産。諏訪湖で出会ったボートは私を育て、可能性を広げてくれた。世界で戦いたいと願った夢は現実のものになった。
−今後について
今季は所属するチームの流れに沿って活動する。9月中旬の全日本選手権にはダブルスカルに出場する予定。全力を尽くし、レースを楽しみたい。ただ、来季以降はまだ真っ白な状態。今回の北京五輪で自分は、4年後の日本クルーが準決勝進出を当たり前と考え、決勝やメダルを目標に戦っていくための道筋はつくったと思っているし、決勝レベルで戦わなければいけないと思う。今は自分がそこまで続けるとは簡単には言い切れない。今季を終えてからじっくりと考えたい。
【写真】長野日朝のインタビューに 応じる岩本亜希子選手=24日、諏訪市渋崎の湖畔で
<2008/08/17付 長野日報より>
|