C級地域スポーツ指導員の専門講習と兼ねて実施された更新講習で、今をときめく(?)大林さんのお話を聴く機会に恵まれました。大林さんとは今年の春から長野県ボとしてアドバイザリー契約を結んでこれまでにも色々とお世話になってきました。今回の講習も限られた時間の中で有意義な内容でした。講師:日本ボート協会ナショナルチームコーチ・大林邦彦氏
講習のメモから概要をまとめてみました。一部、筆者の独自の解釈で書いている部分もありますので、大林さんの意図するところと認識のズレがあるかもしれませんがご容赦下さい。ご意見・コメントはコチラまで。なお、[カッコ]内は筆者のコメントです
なお、内容は予告なく追記・訂正されることがあります[2002/11/29 更新]
◎Session 1 リギングの重要性
なにはともあれ、まずは「正しくセッティングされた艇に乗ること」が大前提であり基本である。
良いセッティングの艇に乗れば、艇の動きを正しく感じ取ることができる。一方、セッティングの悪い艇ではこれが難しくなるだけでなく、身体の故障原因にさえなりうる。
艇の動きを感じることができれば、パワー出力の仕方、効率の良い技術を身につけやすい。そのためにも艇のセッティング=リギングが正しいローイングの第一歩。
ここでは高校生・中学生の指導者主体の研修だったため、スカル種目に限定しての話となった。
・オールの梃子比
最近の傾向として、日本ではオールの全長が短くなっている。アジャスタブルタイプが普及したこともあり、CONCEPT、CROKERともに最適なギア比(レシオ)を設定しやすくなった。特にCROKERは、日本仕様で全長の短いタイプになっていて日本人向き。[確かストローカージャパンではブレード形状も加工して販売しているはず] CONCEPTはアジャスタブルだが長めのところで調整するようになっている。
全長の調整範囲 CROKER 282-292cm[大体こんな感じだが要確認], CONCEPT 285-295cm
ビッグブレードの採用や形状の改善によって今のオールは昔に比べて負荷が大きい。このため特にジュニア選手、特に女子や中学生などはできるだけ短く設定した方が良い。285cm程度あるいはそれ以下でもOK。
参考:JAPANナショナルチームでの設定値(シニア2X)
Men 全長:288cm インボード:88cm スパン:158cm オーバーラップ:18cm
Women 全長:286cm インボード:88cm スパン:158cm オーバーラップ:18cm
※艇種の違いによって全長を調整する。(小艇→短く,大艇→長く)
ポイントは、種別(男女、艇種)を問わずインボードとスパンを固定して一定のオーバーラップに設定していること。
一昔前の感覚に比べると、オーバーラップは大きめになっている。これによってストローク全域にわたって体の中心に近い部分で力を加えることができるため、全身の筋肉を上手く連動させることにより「強い」ストロークが表現できる。
良くあるケースとして初心者に「漕ぎやすいだろうから」といってオーバーラップを少な目に設定していることがある。しかし、これはかえって上達を妨げる。この場合「漕ぎやすいだろうから」という判断は端から見ている指導者の思いこみである。
むしろ「早く上手くなりたかったらオーバーラップを小さくしてはならない」(Minimumでも17cm 実際には19cmや20cmでも問題ない) オーバーラップを増やすと、最初は確かに漕ぎにくく感じるが、結局は慣れの問題である。艇に力を伝える感覚が分かってくると、この方がはるかに良いことが自覚できるはず。
すなわち「強く艇を動かすために、オーバーラップは大きく取るべきである。」
---Q&A---
Q)アジャスタブルでない古いオール(全長290cm以上)の場合は?
A)スパンを伸ばしてレシオを確保すれば良い。古いオールも大事に使うべき。
余談だが、最近の日本のチームは最新の良い道具が揃いすぎている。固定長タイプの古いCONCEPTも昔のウッドオールも大事に使う気持ちが欲しい。(下諏訪の艇庫も良いオールを揃えすぎ・・・そうはいっても戸田の大学などに比べればまだ謙虚な部類だが・・・) オールや外国艇ばかりにこだわるのではなく、他にカネをかけるべきところがあるのではないか?
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・Pin to Heel
長さと強さを両立できるポジション設定に不可欠のパラメータ。フィニッシュのポジションでグリップ先端の間隔が20cm程度開くのが目安
最近の若い選手は体格的にも脚が長くなっており、身長の割に大きめの値になっている。選手毎に体の特徴を見極めて調整をすること。
・Heel Depth
目安としては「Pin to Heel」の半分くらいと言われている。これも体型により微調整。臑と腿の長さ比がポイント。
脛が長い->深め 脛が短い->浅め
体から発揮されるパワーを受け止めるという点でフットストレッチャーは非常に重要な部分のはず。スケートやスキーの選手がブーツにこだわるのと同じ考え方があってもよいはず。実際にもアテネに向けて、それぞれの選手向けにカスタマイズした「スペシャル・ストレッチャー」を開発しようという動きがある。
・前傾角
同じクルーであっても値は選手ごとに異なってよい。艇(クラッチ)を押すベクトルは選手によって微妙に異なるから、うまく力を伝えられる角度が変わってくるのは当然。力を水平方向に出力できる選手ほど前傾角は小さくなる傾向。
ただし、どんな設定値にするにせよ(スカル種目の場合)左右の値はキッチリと揃えること。左右のずれはバランスを崩す原因になる。ずれの原因として意外と見落とされがちなのが、オールシャフトのねじれ。シーズン中はたびたびチェックする習慣をつけたい。
CONCEPTは、なんらかのねじれを最初からあるいは経時変化で生じることが多く、必ずチェックすべき。傾向としてS sideがかぶさる方向へ、B sideが切れ込む方向へとねじれていく。(カーボン繊維の巻き方向で決まるので、サイドによらずねじれ方向は同じ)
CROKERはCONCEPTに比べてシャフトの仕上げが丁寧で、初期状態でねじれていたという報告は非常に稀。しかし完璧なツールはないと考えてチェックは怠らない方が良いだろう。
・左右のハイト差
数年前まで主流とされていたハイト差(数mm程度)では不十分なはず。艇の水平を保ったままハンドルをオーバーラップさせようとすれば、手の重なり高さの2/3は差を付けないといけないはず。(実際はそこまでの差はつけないにしても、ハイト差が不十分なまま漕いでいるケースが非常に多い。ハイト差が少なすぎるとBside側の手を上にした場合、交差部で右側が下がる。
初心者の場合、ハイト差を十分に確保して(例えば20mm以上。ただしグリップの間に隙間ができないように)、慣れるに従って徐々に少なくする方向に調整していってはどうか。
◎Session 2 テクニック
「技術について」という事前のリクエストに対してのセッションであったが、内容的には漕ぎのテクニックではなく、コーチングのテクニックとも言うべき内容で、非常に示唆に富んだ興味深い話題であった。
・イントロとしてアメリカでの調査結果を紹介。
全くの初心者を対象にして、
a)1日みっちりと理論を講義してから乗艇
b)30分程度のガイダンスの後すぐに乗艇
という2つのケースでは、後者の方が圧倒的に上達が早い。
なぜか?==>「知識」に縛られて「感覚:センス」が磨かれないから
裏を返せば余計な知識がない人間というのは、本来持っている一番自然で効率の良い動きが最初から表現できる、ということでもある。
・コーチングのスタンス
「できない選手に教える」ではなく、「どうやったらこの選手の本来持っている能力を引き出してやれるか?」という気持ちで接することが大切。これが選手たちの「センスを育てる」ことにつながる。
F県O水産高のM田先生[全然匿名になってないですね・・・]:新入生も初日からどんどん1Xに乗せる。そして「誰にも負けずにとにかく速く漕げー!!!」 こうして各選手の漕ぎをじっくりみていれば、センスのいい選手はすぐわかる。無謀とも言えるボートマラソン(42.195km)も実施。完漕者は出ないこのイベントは、出艇からすべてが競争。エネルギー切れで途中で動けなくなっても、このような環境の中で選手はボート本来の「より速く艇を動かす」という面白さを発見していく。
コーチの立場として大事なのは、「ムリに教えようとしないこと」「教えすぎないこと」「求められたときに的確なアドバイスができること」「あくまでも手助けする立場:主役は選手」ということ。
ミーティングの場で言うことに困ったら、意味のないコメントを発するより何も喋らない方がずっとマシ。(そういう時のコメントは無意味なばかりでなく、むしろマイナスになる) 選手もそうしたコーチの態度はすぐに見抜く。また基本的に選手に対してあれこれ手を加えすぎないこと。(ただしほったらかしで目を配らなくて良い、という意味ではない) そうすることによって選手は自分で自分の感覚・能力を引き出していくことができる。(宇和島水産→東レ:溝辺選手と顧問の吉田先生に言及。「イイ選手だと思うがどう指導すべきか?」「それには何も教えないこと」からスタート・・・・「(何も教えないというのは)本当に辛かった」が、結果的に溝辺選手は素晴らしい選手に成長した。という話)
ビデオで自分の漕ぎを見ることにも意味はある。ただしそれで分かるのはローイングというもののほんの一部だと言うことをしっかり認識した上で見よう。
・日本のボートを世界の流れから遅らせた要因
大林さんの話の中で、「なぜ日本のボートは世界に後れをとったのか」という話が最も興味深かった。個人的にくみ取った内容は以下の3点。
1:人間の本能的な動き(筋肉の使い方)やパワーの出し方に逆行した理論
「漕艇とローイングは似て非なるスポーツ」 武田大作選手に言わせると、ほとんどの選手は、一緒に船に乗っても「同じ競技をやってるとは思えない」というほど、トップレベルとの「感覚」ギャップが大きいのが日本ボートの現状。この「艇を動かす・運ぶ」感覚をいかにして身につけるかが今後の課題と言って良い。
そもそも、これまでオーソドックスといわれてきた「漕技」の中には、人間の元々持っている自然な動きをことごとく否定するような理論[伝統的漕法と言い換えても良い?]が数多く存在している。残念ながらその多くが今も「悪しき伝統」として受け継がれてしまっているようだ。「ボートは脚が大事」と教えられたが為に「脚だけしか使わない(使えない)」スタイルが身に染みついていたりするのが典型例。しかも「脚が使え」ても、それを伝えるべき体幹が鍛えられていないから、結局「艇を運ぶ力」に転換できない、という悪循環になっている。
大切なのは、人間本来の能力に立ち戻ったアプローチである。
(これについては後の実技セッションでも触れる)
2:理論から入る指導法
イントロ部分で紹介したアメリカの調査結果も示すように、理論から入るやり方では、選手の内面にある「感覚的」なモノを殺してしまう可能性が高い。「感覚」とは、センスでありフィーリングである。これらは形もなく、評価の難しいモノではあるが、スポーツにおいて、もっとも重要な要素の一つであろう。様々なスポーツにおいて「投げる」「打つ」「飛ぶ」といった動作には、それぞれに最適な「感覚」を磨いてそれを駆使することが不可欠。自分の体から発揮されるパワーを使って艇を運ぶローイングというスポーツにもそういう「感覚」があって然るべき。しかしこれまでの日本のボートは、これを真っ向から否定するような方法論が平然とまかり通っていた。(これら多くの反省を込めて、若いジュニアはのびのびと、そしてベテランも固定観念を捨てて、みんなが一丸となってボートの面白さを再発見し、レベルを高めて世界に挑戦していかなくてはならない。そしてそれは徐々に実現の方向に向かっている)
3:間違った感覚の言葉を濫用
コーチングにおいて選手に「感覚」を磨く手助けをする際に、「言葉は非常にデリケートなものである」という認識を持つようにしたい。その意味でコーチングのボキャブラリーを増やす努力は大切。[これはコックスとも共通する部分ですね]
また「的確でイメージをつかみやすい言葉」があるように、その逆もある。適切でない言葉・表現は選手の能力開花を妨げる害にさえなりうる。
オススメワード
「(艇を)運ぼう」「運べ、運べ、運べ!」
「フネを感じて動かそう」−−−実際には1Xに乗るのが最もわかりやすい
「誰にも負けないようにとにかく速く漕ごう」
「フネのスピードを出そう」−−−余計な情報のないジュニア初心者はそれだけで本能的に自分の中の感覚を総動員して、もっとも効率的に自分の力を発揮できる漕ぎができるようになるはず。
「DPS(Distance per Stroke)を伸ばそう」−−−ワンストロークでできるだけ艇を動かすことの大切さ。同じ艇速をより低レートで、または同じレートでより速くを意識して並べるのがよい。レートはあまり高くならないように。(ジュニア合宿ではSR24前後 シニアではSR20を指定している)
NGワード
「脚蹴り」
日本ではもっともポピュラーともいえるこの言葉こそが悪の元凶。[生みの親は、伝統ある某T北大の関係者ではないか?と冗談半分に笑いを取ってましたが・・・本当なんでしょーかね?^^; その後関係筋にあたってみたところ、『昔の某K都大コーチが初めて使った造語だという話を、元T北大監督KH氏の資料で読んだことがある』との情報を頂きましたです☆02/11/27追記]
もともとは"Leg Drive"に相当する訳語として用いられ、広まったと思われるが、実は"Drive"には「蹴る」という意味もニュアンスも全くない。海外のローイングマニュアルに「蹴る(Kick)」などという単語は一つもないことからも間違いは明らか。
なぜこんな見当違いの訳し方をしたのかはわからない。しかし、いずれにしてもこの「蹴る」という言葉は非常に厄介な存在である。それは「蹴る」という動作自体が、本来ローイングで発揮されるべきパワーの方向と正反対の出力しかイメージさせないからである。これでは到底「艇をゴールに向かってより速く運ぶ」というもっとも基本的なコトすら意識することができない。
「水を押す」
「押す」という言葉自体は「蹴る」ほどの害はないが、その対象が「水」ということになるとフィーリングとしてはトップ選手の感覚とはズレている。「ブレードを支点にしている」のだから、そのまわりにある水を押すという感覚でも良いのでは?とか、クラッチを「押す」反作用としてブレードまわりの水が押されるの当然ではないかという意見もある。しかし研ぎ澄まされた漕手の内部感覚は「水にはできるだけ柔らかく接して力を加えず、クラッチには大きなパワーをかけて艇を動かしたい」というものだという。もちろんこの場合も、物理的には反作用として「水を押す」ことにはなるが、それは感覚的には「やむを得ず押す」というものであって、積極的に押すべき意識の対象は、常に「クラッチ」なのである。
[「感覚」という観点で捉えると「単に物理的には同じコトだから」という論理が通用しない部分もあるということなのかなぁ、と思いました。余談ながらTarzan11/27号の武田選手の記事にも同様の記述あり。「日本ボート界の躍進を遅らせたのは(Rowingを)"漕ぐ"と訳してしまったこと。日本で漕艇という言葉が定着し、日本人の中に間違った意識が芽生えた。例えばコーチ陣は、こうやってこうしなさいというテクニック論に終始。フィーリングっていうのを認めなかったんです。・・・<以下略>」これもまたまったく同じ示唆を含んでいますね]
---Q&A---
Q)体格差の異なる選手でクルーを組む場合のに考えるべきコトは?
A)体格の異なる選手が同じ艇に乗ると、どうしても相手の動きがお互いに気になってしまって上達を妨げることが多い。したがって原則としては、それぞれが1XでしっかりとDPSを伸ばすのが理想である。
しかしどうしてもそのメンバーでレースに臨まざるを得ない状況であるならば、クルー内でリギング設定値が異なることは十分あり得るケース。
基本的にはストロークの時間(=艇を動かしているタイミング)が同じになるように調整する。すなわち、
レンジの長い選手:スパンとインボードを伸ばして負荷を軽くする。
レンジの短い選手:スパンとインボードを縮めて負荷を重くする。
この時、いずれもオーバーラップは変えない。(両者を合わせる)
ただし最大でもスパンは160cmで差は4cm,インボードの差で2cm差程度にとどめるべきだろう。なお、ここでは便宜上「負荷を重くor軽くなるように調整」と書いたが、実際の艇上では両者とも「同じ艇を進める」ことになるので、梃子比の差で一方に極端な負担がかかるといった心配は不要である。
普段は別々に1Xで「強いストローク」の表現に専念させ、レース直前(1week)に組むくらいでも良いのではないか。また完璧にキャッチとフィニッシュが合わなくても、「艇を進める感覚」が合えば問題ない。(世界チャンピオンでも一見バラバラのクルーはたくさんいる。しかし彼らの「艇を運ぶ」感覚は素晴らしく一致していることを忘れてはならない)
Q)上記のような2Xの場合、シート配置はどうすべきか?
A)どちらもあり得る。おそらく直感的に「こっちだ」と思う方がうまくいくケースが多いように思う。とのこと。
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◎Session 3 実技編
ローイングエルゴメータを用いたドリル
エルゴメータでは水上のパフォーマンスを完全には再現できない。(むしろ艇を速く動かすための一側面しか評価できない) 特にオールの扱いやバランス感覚などのトレーニングはできない。しかしこれをよく認識した上で使うのであれば、体力アップには有効。また「いかにして体のパワーを出力するか」を確認するのに利用できる。ここでは2タイプのドリルを紹介。いずれも「サスペンション[懸架]のドリル」
始める前に
ストレッチャー高さ調整をきちんと行うこと=正しいポジションの確保
負荷はできるだけ軽く
A
A1:脚は伸ばして上体前傾した姿勢からファイナルまで
股関節−体幹−背中−肩−腕 の連結から出力
A2:上記に少しだけ脚のドライブを加える
A3:フルストロークによる上記イメージの表現
B
B1:キャッチの姿勢から脚が伸びきるポイントまでの各部位の連動
LegOnlyとは意識する部分がまったく違うことに注意
B2:上記に肩の動きを加えてドライブ
B3:フルストロークによる上記イメージの表現
上記B1,B2,B3で「股関節を使えているか?」チェック−>根っこから前傾した姿勢から
パワーの出力に関する補足事項
・「全力を出す」感覚を表現すること。
特に女子では難しいケースが多い。
神経から「全力を出せ」という命令が出せない。→出すためのトレーニング
ウェイトトレーニングで重い物を持ち上げられるようになるメカニズムは、筋力アップやテクニック習得よりも実はこれが支配的。
・水上メニュー前のウォームアップとしても有効
・地面からJumpするときの体のコンビネーションは、ローイングの動作との共通点が多く、大変参考になる。
・高校生のエルゴを見て
春に比べると、「脚だけ」で漕ぐ選手が少なくなって、だいぶ良くなった。
背中や肩を使えるレベルまでは達していない。もっと肘を上げて肩を使って欲しい
・レンジの話
実際の可動域という観点からすると、脚も肩も腕もほとんど変わらない(いずれも50cm前後)という点に注目する必要がある。すなわち従来当たり前と思われていた「脚>上体>腕の順で重視する考え方」は正しくない。同じレンジを生み出せる各部位をうまく連結させてパワーを発揮し、艇を運ぶことがすべてに優先する。
日本のトップであり、世界とも互角に戦える武田選手は、実はこの肩の可動域が非常に大きく、また強い。大きく強い漕ぎのできる骨格に恵まれているという要素もあるが、可動域を広げ、これを目一杯使って筋肉を総動員させて漕ぐと言うことは、すべての選手にあてはまるレベルアップの指針であろう。是非とも肩まわりの可動域を伸ばす努力をしたい。このためにストレッチは有効。
・ウェイトトレーニング
High Pullが効果,安全性の点からCleanよりもオススメ。できるだけ高く。部分でなく全身を使って。
Squatはヒザを前に出さずに、股関節を使えるように背中を伸ばしてお尻を引いた姿勢から。
ダンベルなどを用いた部分トレなども肩の可動域などに有効
---Q&A---
Q)「水上でなんぼ」という考え方には納得。しかし乗艇できないシーズンなどでなんとかして「陸上でのパフォーマンス把握」はできないか?その一助としてのRowperfectの有効性は?
A)パワーカーブの表示は、有効なツールだろう。出力の上手い選手のカーブを参考にするのも「感覚」を身につける助けになるかもしれない。
一方、コーチする側としては「漕ぎを見ただけでパワーカーブがイメージできる」ような目を養うべきで、そういう努力をしていくべきである。
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